はたまた虚無か

半分は(多分)嘘です。もう半分の半分も(恐らく)嘘です。あとの残りは、おまかせします。(主食はゆでたまごです

影響受けたものでも書きましょうか〜『喜嶋先生の静かな世界』〜

完全に書評です。(唐突)

僕の愛して止まない森博嗣先生の作品『喜嶋先生の静かな世界』。文庫版もあります。(ちなみに解説はあの養老先生。)

 

やっぱりいいですね。もう不動の一位ですこの本は。いいんです。

なにが面白いのか、いや、面白いのかさえわからないし、どんな話か詳細に伝えたところで、読んでもらわなければその素晴らしさは理解されないと思う。ただ一人の学生と、一人の研究者のやりとりを淡々と描かれた作品だということ。

特に山場があるわけでもないし、けれども寝る間を惜しむ程続きが気になるというわけでもない。ドラマ化なんか絶対向いていない、読み始めてからの鮮度が持ち味とでも言える作品ではないでしょうか。(ちなみに僕の持論として、書籍はレジに持っていく瞬間が一番読みたい気持ちが強いときで、それからは日ごとに興味を失っていく足の速いナマモノだというのがある。蛇足ですが。)

そんな中、唯一主人公と先生が一番輝いているシーンは、終盤ふと思いついた質問を先生に聞きにいった際、いつもはさらりと答える先生が珍しく頭を抱えてしまう所から。これは先生も数年前に引っかかっていた問題であり、それからすぐに二人でそれを検証してみるのである。その間なんと8時間。普通の人なら一つの問題と向き合うには気の遠い時間であるとは思うが、これが学問の深遠さ、人間の持ちうる誠意の尊さかと思わせてくれる、最高にクールな描写だと僕は思えた。(そう、思えた。これはとても喜ばしいほど幸運だなと思う。)

恐らく、森先生の大学人としての経験が至る所に活かされていると思うし、一部ではそのまま自伝として読み取っても差し支えないのではないかという箇所もある。でないとこんなマイナな作品は書けないであろう。

とても薄っぺらい書評だが、読み終えた記録を書かずにはいられなくなったので一気に書いてしまった(ものである)。人物たちの誠実さと優しさに、幼少に読んだ絵本の様な余韻を感じつつ、この作品に感謝を述べた次第。

※この文章は100%リサイクルです。